02.背くらべ
「…お前、また背伸びた?」
ふと気がついたこの身長差。
毎日会ってるからか、全然気づかなかったがなんとなく、ちょっと、…前より大きい気がする。
だってただでさえ似たような身長だったのに気がつけばオレは上を見上げてた。
「ヒカルが縮んだんじゃない?」
「んなことね−よ!」
「あ、でもこの間測ったら4月より3センチ伸びてたよ」
「3…っ?
お前毎日何食べてんだよ!」
「普通だよ。成長期なんじゃない?」
「…」
何か、不公平だ。
オレなんか毎日牛乳飲んでるのに。
オレの成長期はまだなのか?
そんなオレの気持ちを見抜いたかのようにあかりが笑った。
「男の子より女の子の方が早いって。この間保健の先生がゆってたよ」
そうは言われてもなっとくいかない。
女より背が低いなんてじょうだんじゃねぇ…!
なんとなく腹が立って、オレはそっぽ向いた。
あかりが困った気がしたけど、でも腹が立つもんは腹が立つ。
だけどそんな時間も束の間で、あかりが思い立ったように言い出した。
「あ、でもさ。
ヒカル、手出して?」
「は?」
「いーから」
そう言ってあかりが、自分の手を開いてオレに向ける。
ああ、合わせるのか。
合わせてどうすんだ。
そうは思ったが言われるままに手を差し出し、あかりの手に平にオレの手のひらを重ねる。
つめてぇ。
「ヒカル、おっきい手!」
うわー、とあかりがおどろいて、重ねた手をまじまじと見る。
なんだ?
そんなに珍しいのか?
「なんだよ」
「ヒカル手がおっきいからきっとおっきくなるよ!」
やけににこにこと、うれしそうにあかりが笑う。
――ので、なんかひょうしぬけして。
さっきまでのくやしさもどこかに飛んでいってしまった。
別に、きげんが悪かったとか、そんなんじゃないけどさ!
「あかりなんてあっという間に追い越してやるよ」
「そしたらわたし、ヒールのくつはくもん」
「やめとけよ、危ないだろ」
「でもおねえちゃんだってはいてるよ」
「あかりはぜってーこけるって」
「そんなことないもん!」
ぷくっと頬を膨らませるようにして今度はあかりがそっぽ向いてすねる。
そのほっぺを、からかうように指先でつついたら「何するのー!」ってゆった。だけどその顔は、台詞に反してうれしそうににこにこしてて。
何がうれしいんだか。
ホント、からかいがいのある奴だ。
きっとそれは大人になっても変わらないと思う。
いつかオレがすごく背が伸びて、
あかりがヒールをはいて歩いたら、
どんなんだろうと思ったら少し照れくさい気がした。
キレイに焼けたトーストに、お気に入りのいちごジャム。
スクランブルエッグとウィンナーが添えられて、そしてコップに注がれたのは。
「あかり、どうしたの?」
「牛乳じゃなくてジュース無いの?」
洋食の朝ごはんには牛乳。それはいつものお決まりだけど。
「どうして?」
「だって……背が……」
最後まで言えずに、口ごもる。
けれどお母さんには分かったみたいで、溜息を零してまた荒いものを続ける。
背中越しに、カチャカチャと音が聞こえて。
「あなた成長期なんだから。カルシウム取らなきゃだめよ」
そういってお母さんは許してくれなかった。
……お母さんのいじわる!
ふと気がついたこの身長差。
毎日会ってるからか、全然気づかなかったがなんとなく、ちょっと、…前より大きい気がする。
だってただでさえ似たような身長だったのに気がつけばオレは上を見上げてた。
「ヒカルが縮んだんじゃない?」
「んなことね−よ!」
「あ、でもこの間測ったら4月より3センチ伸びてたよ」
「3…っ?
お前毎日何食べてんだよ!」
「普通だよ。成長期なんじゃない?」
「…」
何か、不公平だ。
オレなんか毎日牛乳飲んでるのに。
オレの成長期はまだなのか?
そんなオレの気持ちを見抜いたかのようにあかりが笑った。
「男の子より女の子の方が早いって。この間保健の先生がゆってたよ」
そうは言われてもなっとくいかない。
女より背が低いなんてじょうだんじゃねぇ…!
なんとなく腹が立って、オレはそっぽ向いた。
あかりが困った気がしたけど、でも腹が立つもんは腹が立つ。
だけどそんな時間も束の間で、あかりが思い立ったように言い出した。
「あ、でもさ。
ヒカル、手出して?」
「は?」
「いーから」
そう言ってあかりが、自分の手を開いてオレに向ける。
ああ、合わせるのか。
合わせてどうすんだ。
そうは思ったが言われるままに手を差し出し、あかりの手に平にオレの手のひらを重ねる。
つめてぇ。
「ヒカル、おっきい手!」
うわー、とあかりがおどろいて、重ねた手をまじまじと見る。
なんだ?
そんなに珍しいのか?
「なんだよ」
「ヒカル手がおっきいからきっとおっきくなるよ!」
やけににこにこと、うれしそうにあかりが笑う。
――ので、なんかひょうしぬけして。
さっきまでのくやしさもどこかに飛んでいってしまった。
別に、きげんが悪かったとか、そんなんじゃないけどさ!
「あかりなんてあっという間に追い越してやるよ」
「そしたらわたし、ヒールのくつはくもん」
「やめとけよ、危ないだろ」
「でもおねえちゃんだってはいてるよ」
「あかりはぜってーこけるって」
「そんなことないもん!」
ぷくっと頬を膨らませるようにして今度はあかりがそっぽ向いてすねる。
そのほっぺを、からかうように指先でつついたら「何するのー!」ってゆった。だけどその顔は、台詞に反してうれしそうににこにこしてて。
何がうれしいんだか。
ホント、からかいがいのある奴だ。
きっとそれは大人になっても変わらないと思う。
いつかオレがすごく背が伸びて、
あかりがヒールをはいて歩いたら、
どんなんだろうと思ったら少し照れくさい気がした。
*脳内設定では5年生くらい。
ヒカルはきっとまだ大きくなるに違いない。(脳内設定)
だって男子の成長期って高校生ですもんね。
キレイに焼けたトーストに、お気に入りのいちごジャム。
スクランブルエッグとウィンナーが添えられて、そしてコップに注がれたのは。
「あかり、どうしたの?」
「牛乳じゃなくてジュース無いの?」
洋食の朝ごはんには牛乳。それはいつものお決まりだけど。
「どうして?」
「だって……背が……」
最後まで言えずに、口ごもる。
けれどお母さんには分かったみたいで、溜息を零してまた荒いものを続ける。
背中越しに、カチャカチャと音が聞こえて。
「あなた成長期なんだから。カルシウム取らなきゃだめよ」
そういってお母さんは許してくれなかった。
……お母さんのいじわる!
*あかりちゃんもちょこっと気にしてるようです。
2005.07.01