05.侵入者到来

 邪魔なのは、誰?
(―――あ、)

 また、だ。

 人通りのまばらな廊下の奥に、見慣れた人影。一つはヒカル、もう一つは、名前も知らない、女の子。
 最近ちっとも顔を合わせなくなったヒカルは、少し大人びた顔で、いつものように笑っていて。

 胸が。
 ぎゅって、なる。

(―――違う)

 少し目を伏せて、視界を移して二人を見えなくして。
 手を少し強く握る。
 固く結んだ握りこぶしは、少し私の心に似ているかもしれない。

 だけどそれをほどくことは、どうしても出来なくて。

(―――私は、別に、)

 ヒカルなんて。
 好きなんかじゃ、ないんだから。

 そう呟くのはもう何度目だろう。だけど何度だって否定するよ。

 皆が言う。

『あかりには進藤君がいるもんね』

 ―――ねぇそれって誰が決めたの?

 違うよ。好きじゃない。ヒカルなんて。好きなんかじゃないのに。どうして皆、邪魔するの。
 私たちただの幼馴染なのに。
 だから一緒に居るのに。

(……痛い)

 手が?胸が?

 だけどじゃあ、どうすればいいの?
 私はこのままで居たいだけなのに。
 幼馴染で、居たいだけだから。

 ―――だけど、ホントは。

 ―――わかってる、んだ。

 押し殺してる気持ち。隠し続けている気持ち。ヒカルにも、そして自分にも。


(…それでも)


 ヒカルの隣に、居たいから。





 だから恋心(あなた)は、要らないの。



*切なくてすいません。ただの幼馴染という関係に、終止符が打たれるならそれは他のなんでもなく恋心かな、と。好きだと思ってしまったらもうただの幼馴染ではなくなっちゃう、て思ってて。
でも本当は恋しててもそうでなくても幼馴染であることに変わりはないんだけど結構あかりちゃんてそこんとこ拘ってて踏み出せないじゃないかなぁというのが個人的な印象なんですが…どうでしょう(笑)