09.大好き

 好きだって言うのは簡単だけど。
(―――ったく、何でこんなことになっちまったんだ…!?)

 ヒカルは一つ、深い嘆息をこぼす。
 そして目の前には、泣き続ける幼馴染の姿。
 よく息が詰まらないものだと感心するほど、繰り返し嗚咽を漏らす。

 泣き顔は嫌いじゃない。
 ――というか、ぶっちゃけてしまえば好きだ。(あかりには言わないが)(つーか言えるかっつの)

 それでも、ここまで泣かれると、さすがに、なんていうか、…正直、参る。

 ヒカルはもう一度、深い深いため息をついた。
 それが気に障ったのだろう。それまで泣き続けていたあかりが、キッとヒカルを睨んだ。

「…なによ、ヒカルのバカ!」
「バカとは何だよ。
 大体、何でそんな話になるんだ!?」

(俺が、お前を、…どうでもいいとか)
(どう考えたってありえないだろ…!?)

 だけどヒカルのそんな心中があかりに伝わるハズもなく。
 ただ、あかりの涙を煽るだけで。

「―――っ分かったよ!」

 その大粒の涙に、白旗を揚げるのに時間はかからなかった。
 結局、この幼馴染には適わないのだと、今更ながらにヒカルは思う。

「いいか、一度しか言わないから良く聞けよ!?」
「…うん」

 ヒカルの言葉に、あかりは息をのんで必死に涙を堪える。
 それでも溢れてしまった涙は止める間もなく頬を伝う。
 ヒカルは自分の袖でそれを乱暴に拭って、気合を入れるように、あかりをキッと睨む。

 まるで喧嘩を売るように。

 そしてあかりも、その喧嘩を買うように、ヒカルをキッと睨んだ。
 傍から見れば、それは恋人同士というより、むしろ子供の喧嘩のような二人。

 それでも、
 不器用だけれど、
 ―――まずは最初の一歩から。


す き だ っ」


 少しずつ、ちょっとづつ。
 ―――二人歩いていけたら、いいね。



*あまいってむずかしいですネっ
ちょっとがんばったんですけどネっ