33.弱点みっけ

 あきれるくらい、分かりやすいのね。
「進藤」
「ンあ?」


 給食のパンを口に入れたまま、進藤は顔だけで振り返り返事をする。
 行儀悪いと思いつつ、私は構わずにさっき見たままをそのまま告げる。

 こいつのためというよりむしろ可愛い彼女のため。


「藤崎さん」
「は?」
「中庭で、しつこく言い寄られてたみたいだけど?」


 本当のところは知らないけどね。
 と、それは言わずに置いた。どちらにしたってその方がおもしろ…彼女のためだもの。

 そして案の定、食べかけのパンを口に詰め込んで、進藤は舌打ちしながら席を立つ。


「何処行くの?」
「便所」


 嘘ばっかり。
 分かってるけど、でも言ったらきっと止めてしまうから敢えて言わない。

 進藤との付き合いなんて同じクラスになって数ヶ月だけだけど、単純すぎる彼女の幼馴染はとても分かりやすい。

 大人びて、澄ました彼の。
 囲碁では期待の新星と言われる彼の。

 弱みなんて聞かなくても分かる。


「いってらっしゃい」


 がんばってね、藤崎さん?



*そんな金子さんが好きです。