君を見つけてしまったあの日

## キラメキ銀河町商店街 第26話の後
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何もトクベツな意味なんて無くって、名目っていうか表向きっていうか、そうゆう意味合いではお礼ってことにしてたのは確かだけど、でもそれ以上にただ単に、喜ぶかなってそう考えただけの話であって。
だからちょっと、予想外だった。

「……なんで?」

なんでって何だよイバちゃん。
あまりに拍子抜けした台詞に、俺も思わず言葉に詰まる。

「や、だから。欲しかったんだろ?」

それ、と、イバちゃんの手に渡した小さなビンを指差して言う。
ビンの中には、薄いピンクの液体が入っていて、ちょっとキラキラした感じの色合いが可愛いんじゃないかと思う。要するにマニキュアだ。
もちろんそんな良いモンじゃなくて安いやつだけどさ。

「この間さ、薬屋でずっと見てただろ、それ。
でも結局買わなかったみたいだからさ」

見てたの?と、イバちゃんが少し驚いた風に言う。
だから、おう、と答えて、ニカッと笑った。
だけど返ってきた言葉はやっぱり予想外だった。

「いい」
「えっなんで!」

突っ返すように、マニキュアのビンを俺に差し出す。
なんでだよ、欲しかったんだろ?
…喜ぶと、思ったのに。

「こんな、がさがさな手につけたってしょうがないじゃないでしょ。
それに……」

そう言ってイバちゃんは、少し視線を逸らして言う。

「…柄じゃないしね?」

顔は笑ってる。
声も笑ってる。
でも、イバちゃんは笑っていないような気がして、なんか胸の奥がぎゅってなった気がした。

「…なんだ、そんなこと」
「そんなことって!」
「そんなこと、だよ。
大丈夫だからつけてみなって。きっと似合うと思うぜ」

本当は知ってる。
自分、達、のせいで大事な幼なじみ(女子組)が謂われのない陰口を、たまに言われてるってこと。
ミケはともかく、イバちゃんやサトは少なからず気にしてること。
だけどそんなこと俺たち(ミケ曰くマブダチの会)には関係無いし、っていうか別に全然そんなことないし。

「な?」

そう言って、俺はもう一度笑った。
そうしたら今度こそ、イバちゃんもちゃんと、顔だけじゃなく声だけじゃなく、しょうがないなっていつもの顔して笑った。

* * *

ちなみに、イバちゃんがそのマニキュアを着けているのを見たのはそれから結構経ってからのことだった。

ほら、やっぱり。

「―――似合うじゃん」
「…アリガト」

少し照れたように笑うイバちゃんが、妙に頭に焼き付いて、俺もやけに嬉しくなった。



# 初出:2007.11.28
# 26話のイバちゃんがあまりに切なかったので、幸せ補完計画、ってことで(笑)