あの日見つけたあの表情

# キラメキ銀河町商店街 近い未来にあるといいと思うお話
# キュー←イバ前提でのキュー

 別段どうってことない光景だった、それは。いつもより少し遅くなった帰り道、商店街を離れた駅前で、帰路につく人の群れがいつもより遠く感じる。西日が強くて眩しくて、思わず手をかざして見えた風景に、驚いて立ち止まる。

 べつじんみたいだ、と思った。

 人の好い彼女が、自分達幼なじみ以外の男と楽しそうに喋っている姿はそれ自体さほど珍しいことじゃない。
 姉御肌の彼女に、慕って頼るのは何も俺たちだけじゃない。
 そんなことは今更で、だからトクベツどうこう言うようなことじゃない。ただのクラスメイトかもしれないし、あるいは馴染みの客かもしれないし、いやそうだとしたら同じ商店街の俺だって顔ぐらい見たことあるだろうから学校の友達って辺りが有力な線だけど、仮にもし、万が一、いや万が一っていったらイバちゃんに失礼かもしれないけど。でも万が一イバちゃんの、彼氏、なんかだったりしたとしても、それは歓迎するべきことだし、もちろんイバちゃんに限って悪い男に捕まったり何かしないだろうしさ。

 そうそう。
 そうだそうだ。

 自分で勝手に納得して、誰も見てはいないがうんうんと頷く仕草をする。
 今度会ったときに問いつめてやろう。そう思って、視線を戻したその先にいたイバちゃんは、やっぱり何処か別人みたいで。

 ―――なんで?

 胸がジリ、と灼けるような、そんな感覚がした。
 そうして、さっきまで自分を納得させた勝手な理由があっさりと何処かへ消えて。

 いつも自分に向かって、仕方ないなって笑うイバちゃんが、今そこに居ない。
 何をそんなに笑ってんの。ていうか何でそっちに居んの。今頃みんないつもの一番星に居てさ、サトが宿題やる横でマモルがまた訳の分からん本読んで、ミケがタイ焼き嬉しそうに食べてんのをクロが傍目から丸わかりな顔して見ててさ。そんで、そこで、イバちゃんも笑ってて。

 なのに何で、と思う。

 同時に、むしろ俺こそなんでだよ、とも思う。

 今この胸を焦がす、違和感の正体が分からない。
 それでもただ、違う、と。それだけを強く感じた。





# 初出:2007.11.14
# これはキューになっているのか甚だ疑問です。