おにごっこ

 人工的に作られた太陽が、たぶん明日も明後日も同じであるだろう光を放って地上を照らす。夜が明けてまだ数時間も経っていないのに、せわしなく散り散りに歩く人たちの雑音が耳に久しいような気がした。


 ソードブレイカーに帰ろう。
 罵られても煙たがられても。あたしの帰る場所はあそこしかないから。


 そう心に強く決めて、朝の街をミリィは一歩一歩踏みしめるように歩いた。
 その足取りは昨夜とは大違いで。ミリィはいっそ鼻歌でも歌いたい気分だった。昨日はほとんど見なかった街の景観が、はじめて見るのになんだかいとしくも感じられた。




 ずっと、気になっていたことがあった。
 それはきっと聞いちゃいけないことで、だから訊かないと決めた。
 そう決めたから、励ますとか慰めるとか、出来ないししちゃいけないんだとおもった。

 だけど時折見せるあの寂しそうな顔をどうにかしたくて。


 わがままでいいから。やっかい者でもいいから。
 自分らしくいようって決めたんだ。



 ―――たとえこの先何が起ころうとも。



 ケインが美味しそうにあたしのご飯食べて、キャナルがキッチン壊すなーって怒って、そんであたしが懲りもせずコックピットでお茶飲んでまた怒られて生命維持装置止められちゃったりして、―――そんな未来があるのなら。



 わがままでいよう。

 いっそごうまんだとおもえるほどに。




 おいかけて、
 おいかけておいかけておいかけて。
 そうしたらいつかあなたをつかまえることができるだろうか。