近い過去のお話
みなさんこんにちは。
1人の男と1人の女が不思議な巡り合わせで出会い、お互いの気持ちが引かれあい始めた頃のお話。
私はその様子をつぶさにのぞき……いえ、温かく見守らせていただきました。
残念ながら当時の映像記録は破棄されてしまいましたが、私が覚えている『ある出来事』を再現してみたいと思います。
それでは、お楽しみくださいませ。
−−−−−−−−−−−−−
標準時間で9月下旬。
それは、季節的にはそろそろ朝夕に肌寒さを覚える頃でもある。
「キャナル、ふつーあそこまで再現するかぁ?」
「そーよそーよ。おかげで朝はみの虫になってしまったわ」
コックピットに現れたケインとミリィの恨めしげな声に、計器類のチェックを行っていたキャナルは振り向いた。
「あら2人ともおはようゴザイマス。って、再現って何のことです?」
「惑星に下りたときと同じよーに、部屋の温度下げたことよ。毛布とかは出してないし、薄いシーツだけで寒かったんだから」
「それはおかしいですねぇ。ソードブレイカー内は1年中一定の温度に設定してあるはずですけれど」
「設定してあるはずもなにも、実際に朝起きたらめちゃくちゃ寒かったんだよ!」
頬を膨らませるミリィの横で、ケインは大きなくしゃみを1発。
「ちょっと待ってください」
キャナルは船内温度センサーを調べ始める。
「設定し直したわけでもないですし、ちゃんと作動はしてますよ」
「じゃあ、何で朝がこんなに寒いわけ?寒いのはサイフの中身だけで十分だわ」
「私に吠えられても知りませんよ。あ、もしかしたら」
「「もしかしたら?」」
『ぽんっ』と手を打ったキャナルに、つかみ掛かりかねない勢いでケインとミリィは身を乗り出した。
「2人が同じ部屋で寝なさいっていう、神様からのお告げなんだわ。きっとそうよ。朝がどんなに寒くても、隣にいる恋人の肌が互いを暖めあうのだから」
キュッキュッキュッ
「何やってるんですかぁぁぁ!」
「何やってるって聞かれても……。ただ、ありもしないお告げをのたまって夢見ている奴の回路をつけたしてやろーかなぁと」
「右に同じ」
叫んだキャナルに、振り向いたケインとミリィの手には黒のマジックが握られていた。しかも極太の油性。
「それに、付き合いはじめて日が浅いのに、同じ部屋で寝るなんて、そんな大それたことできるもんですか」
「大それたことじゃないですよぉ」
真っ赤になって言うミリィに、キャナルはコンパネの上に書かれた線を消そうと躍起になりながらも答えた。
「そんな大胆な行動に走るには時機が早すぎる。下準備だってまだお……」
セリフを遮って、ミリィの右拳がケインの下あごにめり込む。いきなりの攻撃にたまらずバランス崩してひっくり返るケイン。
「下準備がまだ何?」
笑いながらそう問いかけるミリィ。しかしその目が少しも笑っていないことに気がついて、ケインの顔は少し引きつったりする。
「とにかく、キャナルが部屋の温度をちゃんと管理してくれてたら何も問題はないのよvvv」
「わ、わかりましたから、マジックから手を離してくれません?」
これ以上落書きされてはたまらないとばかりに、キャナルは望まない下手に出た。
「明日が寒くなかったらね」
この日の朝の言い合いは、一応の結末にたどり着く。
ところが、次の日の朝。
「いっやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
高音域の悲鳴に続いたのは、威勢のよい乾いた音。
「キャナルッ!あんたは何考えてんのよっ!」
コックピットに走り込んできたミリィは、パジャマの上に上着を引っかけてきただけという格好。
「もう許さないんだから!」
「やめてぇぇぇぇぇ」
極太マジックでコンパネに線を描き始めた彼女に、キャナルは泣きながら取りすがった。
「温度調節の件は本当に私のせいじゃないのぉぉぉぉ!」
「あんたのせいじゃなかったら誰のせいよ。この船のことをいじくれるのは、この船自身であるキャナルしかいないでしょーが。おまけに、寝ぼけたケインがあたしのベッドにもぐり込むように仕組んだのも!」
そう言い返しながら、ミリィは落書きの手を止めない。
「まぁ、そんなことがあったんですか?」
「白々しいぞ、キャナル」
コックピットにやってきたケイン、その両頬は赤く染まっていた。
「どーしてくれる、お前の悪巧みのせいで思いっきりひっぱたかれたじゃねーか」
そういいながら、ケインも取り出したマジックのふたを取り、ミリィとは別の位置のパネルに落書き開始。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
悲鳴を上げるキャナルも何のその、報復は2時間続けられた。
−−−−−−−−−−−−−
と、いうようなことがあったんですね。
このときは恥ずかしがっていたミリィも、今ではしょっ中ケインの部屋に行ってますし。
ですから、のぞき……じゃなくて、監視用カメラのテープ残量を再々気にしなきゃいけないんですよ。
『なかよきことは美しきかな』って言いますけど、あの2人の場合はねぇ……。
またそろそろ、レイルやニーナを呼んで、テープの鑑賞会でもしましょうか。
(気配に気がついて振り返ると、視線の先には薄く笑うケインとミリィの姿が。もちろん、2人の手には極太マジックが握られて……)
1人の男と1人の女が不思議な巡り合わせで出会い、お互いの気持ちが引かれあい始めた頃のお話。
私はその様子をつぶさにのぞき……いえ、温かく見守らせていただきました。
残念ながら当時の映像記録は破棄されてしまいましたが、私が覚えている『ある出来事』を再現してみたいと思います。
それでは、お楽しみくださいませ。
−−−−−−−−−−−−−
標準時間で9月下旬。
それは、季節的にはそろそろ朝夕に肌寒さを覚える頃でもある。
「キャナル、ふつーあそこまで再現するかぁ?」
「そーよそーよ。おかげで朝はみの虫になってしまったわ」
コックピットに現れたケインとミリィの恨めしげな声に、計器類のチェックを行っていたキャナルは振り向いた。
「あら2人ともおはようゴザイマス。って、再現って何のことです?」
「惑星に下りたときと同じよーに、部屋の温度下げたことよ。毛布とかは出してないし、薄いシーツだけで寒かったんだから」
「それはおかしいですねぇ。ソードブレイカー内は1年中一定の温度に設定してあるはずですけれど」
「設定してあるはずもなにも、実際に朝起きたらめちゃくちゃ寒かったんだよ!」
頬を膨らませるミリィの横で、ケインは大きなくしゃみを1発。
「ちょっと待ってください」
キャナルは船内温度センサーを調べ始める。
「設定し直したわけでもないですし、ちゃんと作動はしてますよ」
「じゃあ、何で朝がこんなに寒いわけ?寒いのはサイフの中身だけで十分だわ」
「私に吠えられても知りませんよ。あ、もしかしたら」
「「もしかしたら?」」
『ぽんっ』と手を打ったキャナルに、つかみ掛かりかねない勢いでケインとミリィは身を乗り出した。
「2人が同じ部屋で寝なさいっていう、神様からのお告げなんだわ。きっとそうよ。朝がどんなに寒くても、隣にいる恋人の肌が互いを暖めあうのだから」
キュッキュッキュッ
「何やってるんですかぁぁぁ!」
「何やってるって聞かれても……。ただ、ありもしないお告げをのたまって夢見ている奴の回路をつけたしてやろーかなぁと」
「右に同じ」
叫んだキャナルに、振り向いたケインとミリィの手には黒のマジックが握られていた。しかも極太の油性。
「それに、付き合いはじめて日が浅いのに、同じ部屋で寝るなんて、そんな大それたことできるもんですか」
「大それたことじゃないですよぉ」
真っ赤になって言うミリィに、キャナルはコンパネの上に書かれた線を消そうと躍起になりながらも答えた。
「そんな大胆な行動に走るには時機が早すぎる。下準備だってまだお……」
セリフを遮って、ミリィの右拳がケインの下あごにめり込む。いきなりの攻撃にたまらずバランス崩してひっくり返るケイン。
「下準備がまだ何?」
笑いながらそう問いかけるミリィ。しかしその目が少しも笑っていないことに気がついて、ケインの顔は少し引きつったりする。
「とにかく、キャナルが部屋の温度をちゃんと管理してくれてたら何も問題はないのよvvv」
「わ、わかりましたから、マジックから手を離してくれません?」
これ以上落書きされてはたまらないとばかりに、キャナルは望まない下手に出た。
「明日が寒くなかったらね」
この日の朝の言い合いは、一応の結末にたどり着く。
ところが、次の日の朝。
「いっやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
高音域の悲鳴に続いたのは、威勢のよい乾いた音。
「キャナルッ!あんたは何考えてんのよっ!」
コックピットに走り込んできたミリィは、パジャマの上に上着を引っかけてきただけという格好。
「もう許さないんだから!」
「やめてぇぇぇぇぇ」
極太マジックでコンパネに線を描き始めた彼女に、キャナルは泣きながら取りすがった。
「温度調節の件は本当に私のせいじゃないのぉぉぉぉ!」
「あんたのせいじゃなかったら誰のせいよ。この船のことをいじくれるのは、この船自身であるキャナルしかいないでしょーが。おまけに、寝ぼけたケインがあたしのベッドにもぐり込むように仕組んだのも!」
そう言い返しながら、ミリィは落書きの手を止めない。
「まぁ、そんなことがあったんですか?」
「白々しいぞ、キャナル」
コックピットにやってきたケイン、その両頬は赤く染まっていた。
「どーしてくれる、お前の悪巧みのせいで思いっきりひっぱたかれたじゃねーか」
そういいながら、ケインも取り出したマジックのふたを取り、ミリィとは別の位置のパネルに落書き開始。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
悲鳴を上げるキャナルも何のその、報復は2時間続けられた。
−−−−−−−−−−−−−
と、いうようなことがあったんですね。
このときは恥ずかしがっていたミリィも、今ではしょっ中ケインの部屋に行ってますし。
ですから、のぞき……じゃなくて、監視用カメラのテープ残量を再々気にしなきゃいけないんですよ。
『なかよきことは美しきかな』って言いますけど、あの2人の場合はねぇ……。
またそろそろ、レイルやニーナを呼んで、テープの鑑賞会でもしましょうか。
(気配に気がついて振り返ると、視線の先には薄く笑うケインとミリィの姿が。もちろん、2人の手には極太マジックが握られて……)
*From KIRYU
サイト開設祝いに頂きました!ミリィ可愛い…!てゆっかケイン!下準備て!!(笑) 卒のないキャナルとか、あぁもぅ愛しいなぁ、こいつ等は!!(笑)
ゆーきさんありがとうございました!