ハピハピバースディ

 夜もイイ感じに更けて昼よりも下がった気温に冷えた空気が空を冴え渡らせ始める頃、いつもよりちょっとだけ豪華な宿屋の、いつもよりちょっとだけ豪華なレストランのテーブルを囲んで座る様に二人は居た。


「ほら、好きなだけ食えよ」
「ぢゃっ、遠慮なく!いただきまーす!!」


 答えて、フォークを持つと、待ってましたと言わんばかりに目の前の食事にありつくリナ。人の事は言えないが、いつもながら凄い食欲だな、とガウリイは感心する。

 今日はリナの誕生日で。
 だからお祝いに今日の夕飯は珍しく、というかここ最近は殆ど無いガウリイの奢りで。
 その為にここ数日は、リナに隠れてちょっとした依頼をこつこつとこなしていたのだ。

 もうちょっとなんかこう、あったかもしれないけど。気の効いたものなんて選べないし、というかリナは欲しいモノは自分で買ってしまうし。だったらやっぱり、一番好きなものだろ、と、これでもガウリイは必死に考えたのだ。

 ―――簡単過ぎか?

 そう思ったけど。


「ん―――おいし♥」


 目の前でリナが嬉しそうに笑っていたから。
 これでいいかな、と思う。


「あれ、ガウリイ。食べないの?食べないならあたしが貰ってあげるわよ♪」
「いや、食う。―――食うって!」


 返事を聞くより早くガウリイの前のお皿にフォークを差し出したリナを制止して、ガウリイもようやく、その、いつもよりちょっとだけ豪華、な食事に手を付ける。
 と、口に運ぶ直前であることに気付いて、手を止めてフォークを置く。


「そういやまだ言ってなかったな」
「にゃにふぉ?」
「誕生日、おめでとう。リナ」


 そう言うガウリイが、いつになく真剣な目で、そんでもってとても優しく笑うので、リナは思わず口に入れていた食糧を喉に詰まらせそうになるのを必死で堪えた。
 がしぃ!と水の入ったコップを勢い良く握り、一気にその水を喉に流し込む。体内に入った冷えた水が、食道と胃の輪郭をなぞるのを感じて、リナはふぅ、と一息つく。


「………ありがと」


 ……なんだか妙に照れてしまうのは何故だろう。
 思って、リナはそれを誤魔化すように勢い良く目の前にあったソテーを口に入れる。だけどその途端、またグッと喉を詰まらせて、ドンドンと胸を叩く。 そんなリナの様子に、何やってんだよ、苦笑して言うガウリィの声が聞こえて、リナは余計に顔が火照るのを感じた。