22.そばにいて

 許してね。
「ね、ヒカル」

 もくもくと子供の日ケーキを食べるヒカルに、私は嬉しくなって思わず声をかける。

「何?」
「おいし?」
「さっきも言ってんじゃん。
 うまくなかったら食わねぇって」

 そう言ってヒカルはまた、大きな一口を口に運ぶ。途中、コーヒーを挟みながら、ちょっと大きくて少し不恰好なそれを、言葉通り美味しそうに食べる。
 美味しい、って嘘じゃないんだ、って確認して。
 私も、頂いたコーヒーを一口、喉に流す。

 散歩は何処へ行こうかな。
 ヒカルと一緒なんだから、どこかできるだけ、長く居られるような場所がいい。

 そんなことを考えてたら嬉しくて顔が緩んでしまったりして。
 だけど嬉しいんだから、仕方ないよね。

「ね、ヒカル」

 私はもう一度、同じように声をかける。
 だって嬉しいの。
 ヒカルにとっては些細なことかもしれないけれど、でも。

 だからね。

「何」
「ありがとう」

 ありがとう。
 そばにいてくれて。

 そばにいること、ゆるしてくれて。



*嬉しい!が伝わりますように。
(※まのさんのお話の続きというかなんというか。まのさん@落花流水のお話はこちら